鉄道に生きる

亀井 麻未 鉄道本部 営業本部 瑞風推進事業部 列車長

唯一無二のおもてなしで鉄道の旅に感動を添える

ラウンジカー「サロン・ドゥ・ルゥエスト」でのアペリティフタイム。「瑞風」ならではの贅沢なひとときをおもてなしの心で演出する。

 山陰・山陽地方の自然が織りなす豊かな景観美。その中を巡る特別な寝台列車「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」が優雅に駆け抜ける。特別な列車の旅を質の高いホスピタリティで演出するのは、「瑞風」のクルーたちだ。列車長を務める亀井は責任者としてクルーを束ね、お客様の“憧れの旅”をチームワークで支えている。

鉄道というおもてなしの場

沿線の見どころを通過する時刻はすべて頭に入っているという亀井。客室を回り、車窓から望める絶景をご案内する。

 美しい日本をホテルが走る。そのコンセプトにふさわしく、洗練されたホテルのような空間を携え、深い緑色の車体が沿線の風景に溶け込んでいく。山陰・山陽を巡る「瑞風」が亀井の現在の職場だ。「鉄道ならではのサービスでお客様をおもてなししたい」。亀井は入社以来その思いを持ち続け、今に至っている。

 1999(平成11)年に入社した亀井は、京都駅のみどりの窓口できっぷを発売する業務からスタートする。ほどなく車掌となり、関空特急はるかや特急サンダーバードに乗務した。亀井は、車掌を務める中で「正確に、安全に列車を運行することが、お客様へのサービスの根幹」と気づき、運転士を目指す。安全を担う運転士の立場から、鉄道における“おもてなし”をレベルアップしたいと思ったからという。「運転士には深夜業があります。ちょうど男女雇用機会均等法が改正され、女性にもチャンスが来たと思い立ちました」。亀井は国家試験に挑み、動力車操縦者免許を取得。琵琶湖線や湖西線、嵯峨野線などの普通列車に乗務し、運転士として、より安全に、より快適に運行することを心がけた。

すべての経験を糧にキャリアを育む

乗務の前日に行われるミーティングでは、旅の目的や記念日など、お客様のパーソナル情報を全員で共有しておく。

 運転士として、鉄道の運行を担うことへの手応えを感じていた亀井だったが、思いがけず転機が訪れる。車掌、運転士を通して7年間務めた乗務から降り、現場を離れることになったのだ。異動した京都支社輸送課では、所管する車掌の指導業務を担当。その2年後には社員研修センターに移り、車掌・運転士の育成に励んだ。「私に代わって列車を安全に運行してほしい。思いを託すように講師を務めていました」と、当時を振り返る。

 亀井は、その後2度の出産、育児休職を経て復帰し、子育てと両立しながらキャリアを積み重ねていく。思い出深いのは、第二子の育児休職後に配属された技術開発部での2年間だ。新たな部署で待ち受けていたのは、無線式の自動列車制御システムを開発するという“畑違い”の業務だった。亀井は、戸惑いながらも情報処理の基礎知識の習得に努め、データベースづくりに奮闘する。「車両、電気、通信といった多系統にわたる人たちとのものづくりには、多くの刺激と気づきがありました」。互いの立場を理解し協力し合うこと、感謝すること、そして達成感を分かち合うこと。この時の経験は、かけがえのない成長の礎となって今を支える。

※無線通信によって各列車が前方・後方列車を検知し、安全な間隔を確保する保安システム。

列車長としてチーム瑞風を率いる

旅を終えたお客様には、お礼の言葉とともに旅の思い出を記した手紙を書き、車内での記念写真に添えてお送りする。

 2019(令和元)年、亀井は社内の瑞風列車長の「ポスト公募」に手を挙げ、再び鉄道の現場で新たなステージに挑むことになった。JR西日本が誇るフラッグシップトレイン「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」は、10両編成の車両、わずか34名の乗車定員に、号車単位で各1名のサービスクルーを配置し、総勢20名近くのクルーが最上級のおもてなしにあたる。サービスを統括する最高責任者である列車長は、お客様への目配りはもとより、クルーが接客に専念できるように環境を整えることが大きな役割という。

 「瑞風」のおもてなしは、出発前のミーティングから始まっている。お客様一人ひとりの情報を全員で共有し、列車の旅のさまざまな場面での心温まるサービスにつなげていく。運行中、亀井は1号車から10号車までを歩き回る。クルーに自分の姿を見せ、サポートすることはないかと合図を送るためだ。「乗務中、クルーはお客様に全神経を注いでいます。クルーが安心して接客でき、パフォーマンスを高められるよう、クルーには私が寄り添っていきます」。チーム一体となって、「瑞風」が誇る唯一無二のおもてなしを目指す。

※チャレンジ精神に富んだ社員の育成と適材適所の人事運用を目的に、会社の提示するポストに社員が応募し、選抜を経て配置する制度。

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